海外で実践される「演劇教育」の効果

2020年2月にイー・ラーニング研究所がこどもを持つ親を対象に実施した調査によると、こどもに必要な能力第1位は「コミュニケーション力」と回答しており、的確に相手の意図を受け取り、自分の意図を伝える能力が求められています。

また、それ以外の「論理的思考力」「社会人性」「表現力」「積極性」「集中力」「判断力」「継続力」「実行力」など、このグラフにある能力の育成・開発において、大変有効なツールがあります。

「演劇教育」です。

演劇は海外では“生きる練習”と言われ、学校の授業でも実践されており、こどもの成長過程において必須とされています。
また、演劇教育の効果は、近年日本でも注目されるようになり、表現教育やコミュニケーション演劇などとも呼ばれ、文部科学省が推薦するなど、徐々に広がりを見せています。

参考URL:文部科学省 コミュニケーション教育推進会議


「子どもの教育と将来に関する意識調査アンケート」調査概要
調査方法:紙回答
調査地域:全国
調査期間:2020年2月4日~2020年2月13日
調査対象:20代~50代のこどものいる親(男女)計224人
調査機関:イー・ラーニング研究所

なぜ、演劇で「コミュニケーション力」が育つのか?

理由1.|演劇のトレーニングは、コミュニケーション力のトレーニングそのもの

相手の目を見て、自分の言葉を話し、伝える。相手の言葉を聞いて表情や仕草を読み、理解し、受け入れる。これはコミュニケーションの基礎です。
演劇は人間同士のコミュニケーションの芸術なので、「演劇の基礎トレーニング=コミュニケーションの基礎トレーニング」でもあります。

基礎トレーニングだけで、劇的な効果がありますが、演劇を学ぶメリットは他にもあります。
演劇の表現には決まった正解がないため、よりよく伝わるためにニュアンスや動きなどを工夫をし、どこまでも追求していきます。工夫することや追求することは、こども達にとって、とても楽しい自己成長の工程であり、もっともっと良くしようという積極性が芽生えます。

また、演劇は一人では成り立たないものなので、表現を追求していくとき、必然的に相手と関わり合うことになります。

自分がどうしたいかを伝えるということだけでなく、相手がどうしたいのかを理解し、より良い成果を達成するために、何度も意見を交換し合います。

さらには、第三者(観客)から見て、何がベストかを意見交換するという、本来であれば将来社会に出てから行われるような、実践的なコミュニケーションのトレーニングが自然と行われているのです。

つまり、演劇は、表現すること自体はもちろん、それを追求する中でも、コミュニケーションを必要とするので、コミュニケーション力を高めるのに、これ以上ないほど最適な媒体なのです。

理由2.|現実ではない、ウソの世界

コミュニケーションが得意な人と苦手な人の違いは、一見、言葉を使いこなすスキル(ボキャブラリーや抑揚など)に思えますが、それよりも根本的で重大な差があります。それは、コミュニケーションが好きか嫌いかです。

演劇で、コミュニケーションを好きになることができます。

演劇の世界は、虚構、つまりウソの世界です。コミュニケーションが嫌いな人は、「自分が何かを発言して、相手に悪く思われたくない。嫌われたくない。ならば黙っておこう」というネガティブな自己完結に陥りがちです。

しかし、演劇はウソの世界なので、現実とは切り離して、感情を開放することができます。

そしてウソの世界だとしても、自分の感情を出したり、相手の感情を受け入れた経験自体は、コミュニケーションの成功体験として、脳に保存されます。

成功体験が増え続けることで、やがて、相手とわかりあうことの喜びを自然に理解し、いつの間にかコミュニケーションに対する苦手意識は払拭され、堂々とコミュニケーションを楽しむことができるようになります。

理由3.|舞台は一人ではできない。仲間と協力して成功するもの

舞台は一人では成立しません。自分以外の出演者、たくさんのスタッフなど、仲間と一緒に創りあげていきます。

仲間といっても、それぞれが個性もバラバラ、年齢もバラバラです。それでも協力し合い、一致団結しなければ舞台は成功しません。

まず、自分の役がストーリーの中で替えの効かない必要な存在であり、自分が責任を持って演じきらなければならないとわかった時、「自分は替えのきかない存在である」ことを認識するため、揺るぎない自信と誇りを得ることができます。

また、演劇は“芸術”なので、自然と年齢や経験年数よりもそれぞれの“個性”が重要だと気付き、互いにリスペクトし合う気持ちが芽生えます。相手の“個性”を尊重できるようになり、協調性やリーダーシップを取るチカラが育ちます。

そして、この「他者に対するリスペクト」は、コミュニケーションにとって、最も大切な要素であり、独りよがりにならず、他者の意見を素直に聞き、物事に対して柔軟に対応していく力を育みます。

理由4.|リスクがあるから、向き合う。そして達成感が得られる。

スマートフォンや携帯型のデバイスの発達とともに、こどものゲームで遊ぶ時間は、年々伸びています。



ゲームは、嫌になればログアウトすることができ、負けたらリセットボタンを押せば何度でもやり直しができます。
一方、舞台の本番は一度きりで、やり直しはききません。そして、この論理は、どんな小さな子でも理解します。

失敗は許されないという大きなリスクは、ただのレッスンの場では得られない緊張や不安を生み出し、そのリスクを仲間と共有することで、彼らはより本気でコミュニケーションに取り組み始めます。

そして、どうすれば、悪いところをなくし、良いところをより良くできるか考え、話し合い、何度もトライアンドエラーを繰り返して、最終的には、お客さまの喝采を浴びることになります。

それらの体験は、やがて社会に出て迎える更なるリスクに立ち向かう糧となります。 大切なのは、リスクを避けることではありません。リスクの詳細を正確に噛み砕いて把握した上で、越えることです。

N.G.A.の舞台を経験したこどもたちは、そのことをよく知っています。リスクに立ち向かう強い心は、社会を生き抜く上でとても優位な力になります。

「全国学力・学習状況調査」
調査地域:全国
調査期間:2021年5月27日
調査対象:国公立および私立の小中学校。小学校1万9280校、中学校1万0316校
調査機関:文部科学省